グッドプラクティスGood practice

日本で実践されている国際共修は、海外のいわゆる「多文化クラス」とは少し異なります。
国際共修には様々なタイプがありますが、ここでは代表的な3つのタイプとその事例を紹介します。

授業科目名 : キャンパス国際化への貢献
留学生との協働プロジェクトを通して国際性をみにつけよう I(後期)、II(前期)

授業実践者 末松和子(東北大学) 対象学生 全学部生(留学生含む) 授業実施場所 教室・屋外
単位付与 あり(2単位) 実施期間 半年間 開講形態 教室と屋外
使用言語 英語  

1.テーマ設定

大学や社会などのコミュニティに貢献するという一定の「成果」を意識し、文化背景の異なるチームメンバーと英語でコミュニケーションを取りながら協働作業を行う。
Iは国際交流イベントの企画・運営プロジェクト、IIは課題解決型のプロジェクトが中心となる。
チームワーク、リーダーシップ、自発性が重視される協働プロジェクトに取り組むことで、実社会に近い形の職業体験を得ると同時に、多角的な視点で事象を捉え、新たな価値観を創造する機会を得る。

2.教材

特になし

3.クラス運営に係る留意事項

  • 東北大学の国際化に貢献する
  • 課題を発見し解決する
  • 具体的な成果を生み出す活動をする
  • 言語・文化背景の異なるチームメンバーと協力する

上記を徹底させるために毎回の授業において様々な形でリマインドする。

4.課題の内容・頻度

学習目標設定2回、学習振り返りレポート3回、グループ発表1回、高校生向け討論会企画・実施1回

5.評価方法

授業開始時に設定した目標達成をもとに①異文化・自文化理解、②コミュニケーション能力の向上を振り返るレポート(30%)、発表(40%)、ディスカッション、グループプロジェクトへの貢献度(30%)

6.授業実践での留意点

①個人の成長とプロジェクトの成功の区別化
学習者の「学び」のみならずプロジェクトの完成度つまり成果をも重視する。成果が伴うことで学習者の目標達成感や自己効力感は増し、更なる自己成長へのモチベーションは高まる。
②学生主体学習の奨励とファシリテーターとしての役割
授業中は、各チームを渡り歩き、進捗状況を確認しながら、質問形式の「介入」を行う。過度な助言や援助はせず、軌道修正可能な範囲であれば敢えて挫折を経験させる。
③学内外における協力者の確保
理解者、協力者の確保が重要となる。授業が何を目指しているのか、また大学コミュニティや地域社会が連携することで学生に提供できる教育リソースが増え、私たちの共通の関心毎である「学生の成長」を支援することができることを協力者に理解してもらう。
④授業改善
学生の授業評価やレポートのみならず、TAや協力者の意見に耳を傾けながら自己評価を実施し、PDCAサイクルをもとに毎学期、少しずつ授業を改善する。

7.国際共修における教員の教育理念や目標

行動を起こすことで社会が変わるということ、自発的に課題を発見し解決することの大切さを伝えたい。座学では学べない、実社会で必要となるプロジェクトを企画・実施する力、Transferable skillsを身につけてほしい。

8.授業で抱えている課題と課題改善への取り組み

課題1
毎学期の履修者数、とりわけ日本人学生と留学生の比率や留学生の言語・文化背景が読めない。
日本人学生と留学生の構成比次第で授業がかなり変わるので、日本人学生が足りない場合は留学経験者を対象に履修者を募集したり、留学生の場合は交換留学プログラムのメーリングリストで再募集をかけたりして構成員のバランスを担保するようにする。
課題2
日本人学生の英語力が留学生に比べ低いため英語によるディスカッション、プロジェクト企画についていけない。
宿題や成績評価など重要なことは書面や日本語で伝える。チームに学生アドバイザーを配置し、日本人や一部のアジアからの留学生が取り残されていないか確認するようにしている。
課題3
チーム内での役割分担 : やる気のある学生に仕事が集中し、さぼる学生は楽をする。
チーム内で公平に役割分担が出来ているかをサブ・リーダーに確認させる(通常、リーダーに仕事が集中するので)。評価にピア・レビューを取り入れることを伝え学生にも緊張感を持たせている。

9.受講者の反応/コメント

(平成27年度授業の発表レジュメ「一人一言」から)

日本人学生
こんな授業は受けたことがないので新鮮だった。大変だったが、留学生とプロジェクトを企画し、成功を収めることで自信がつき、自分は大きく成長出来たと思う。
日本人学生
最初は英語についていけず、ほとんどプロジェクトに貢献できなかったのに次第に「正しい英語」ではなく「伝わる英語」を意識するようになり、最後は意思疎通が出来るようになった。
日本人学生
国や地域により考え方、プロジェクトへの取り組み方、スタイルがこれほどまで違うのかと驚いた。まさに多国籍な環境に身を置き活動に取り組めたので留学をしたいと心から思うようになった。
留学生
母国でもこのような実践に役立つ授業をして欲しいと思うほど学びの多い授業だった。
留学生
将来、多国籍企業で働きたいと思っていたのでいい経験になった。
留学生
日本人は意見を言わないので少しイライラしたこともあったが、しっかりとした考えを持って、任された仕事はきっちりとこなす責任感のある学生ばかりだったので勉強になった。

授業科目名 : 異文化間コミュニケーションを通じて世界を知ろう ー国際共修ゼミー

授業実践者 末松和子(東北大学) 対象学生 全学部の留学生と日本人学生 授業実施場所 教室・屋外
単位付与 あり(2単位) 実施期間 半年間 開講形態 教室・屋外
使用言語 日本語  

1.テーマ設定

世界で起こっている社会問題をテーマに、言語・文化背景の異なる学生が多角的な視点で議論を行い、相互理解を深め柔軟な思考力を身につけながら、新しい価値観を創造する機会に触れる。チームでの討論、討論会の企画・実施を通してコミュニケーションスキル、プレゼンテーション力を向上する。

2.教材

新聞記事、文献、映像資料など

3.クラス運営に係る留意事項

学生主体のディスカッションを促すために教員は極力、ファシリテーターに徹し、偏った考え方が助長されそうになった時だけ介入する。
グループごとの討論では、留学生にとって発言しやすい環境で進められているか特に留意し、時には使用言語を30分間だけ英語にするなどのショック療法を取り入れるなどして継続的に注意喚起を行う。
効果的なプレゼンテーションについても詳しく説明し、最後の高校生向けの討論会の企画ではグループごとに面談の時間を設け個別に指導する。

4.課題の内容・頻度

学習目標設定2回、学習振り返りレポート3回、グループ発表1回、高校生向け討論会企画・実施1回

5.評価方法

授業開始時に設定した目標達成をもとに①異文化・自文化理解、②コミュニケーション能力の向上を振り返るレポート(30%)、発表(40%)、ディスカッション、グループプロジェクトへの貢献度(30%)

6.授業実践での留意点

  • 一回目の授業で自己紹介だけでなくグループワークを取り入れたアイスブレーキング活動を行うことで話しやすい雰囲気を作る。
  • グループ分けは出身国、男女、学部がなるべくばらけるように配慮。
  • 日本人に対して発話の速度、明瞭さ、使用する語彙について繰り返し留意を促す。
  • 予習をしなければ毎回のディスカッションに参加できないということを体得させ、学生の時事への関心を高め知識を増やす。
  • 毎回のグループ討論後に行う全体での情報共有セッションで留学生にも発言を促す。

7.国際共修における教員の教育理念や目標

全ての学生がこの授業を履修して視野が広まった、成長したと思えるような授業にする。

8.授業で抱えている課題と課題改善への取り組み

課題1
毎学期の履修者数、とりわけ日本人学生と留学生の比率や留学生の言語・文化背景が読めない。
日本人学生と留学生の構成比次第で授業がかなり変わるので、日本人学生が足りない場合は留学経験者を対象に履修者を募集したり、留学生の場合は交換留学プログラムのメーリングリストで再募集をかけたりして構成員のバランスを担保するようにする。
課題2
毎学期の学生の授業への積極度(時事への関心、ディスカッションへの関与)が異なる。
履修者の様子を見ながら扱うテーマを変えたり、グループ・ディスカッションの巡回中に発言を促したり、参加型の授業であることを常にリマインドする。
課題3
日本人学生が自分達にしか通用しない言葉遣いをするので留学生が取り残される。
サブリーダーの役割に「全員が発言しているか確認し適宜、発言を促す」を加えている。議論の展開についていけない人が悪いのではなく、そのような状況を作っている人たちの努力が足りない、ということを繰り返し伝える。
課題4
プロジェクトにおける学生個人の貢献度をいかに正確に評価できるか。
グループ巡回で積極的に発言している学生をマーキングする。レポートで自分のチームへの貢献を自己評価させている。

9.受講者の反応/コメント

(平成27年度授業の発表レジュメ「一人一言」から)

日本人学生
授業で取り上げるテーマ、留学生との交流によって視野が広がり、世界情勢や各国の事情にもっと関心を持たなければならないと痛感した。また自国のことをあまりにも知らない自分に愕然とした。これからグローバル化はますます進むので、国際的な視点で他人と意見が交わせるような人材になりたいと思った。
日本人学生
コミュニケーションや人前で話をするのが苦手だったが、グループでの毎回のディスカッションは楽しく刺激的で、最後はプレゼンテーションもこなせるようになったので、自信につながった。
日本人学生
高校生のディスカッションフォーラムを企画するのは大変だったが、授業以外にもチームメンバーと何度も集まって議論を繰り返し、個別に先生にも自分たちが気づかないような改善点を指摘してもらったので、最終的には満足いく活動ができた。
日本人学生
漠然と留学に関心を持っていたが明確な目標に変わった。
留学生
日本語で予習をしてディスカッション、発表を繰り返す中で、日本語力が上がった。伝え方を工夫するようになりチームの日本人も褒めてくれた。
留学生
日本人の考え方だけでなく議論の進め方が分かりとても勉強になった。
留学生
自国のこと、日本のこと、世界のことをたくさん学べた。自国のことをもっと知らなければ恥ずかしいと思った。
留学生
もっと早くこの授業を取ればよかった。自分の母校ではこのような授業はないので日本に留学に来たかいがあったと思った。

授業科目名 : 国際理解教育の実践(前期)人権教育の促進(後期)

授業実践者 髙橋美能(東北大学) 対象学生 定員25名、受講者数20名 授業実施場所 教室
単位付与 あり(2単位) 実施期間 半年間 開講形態 教室
使用言語 英語  

1.テーマ設定

  1. 『国際理解教育』に関わるテーマだけでなく、小中高と大学における「国際理解教育」の在り方について、ユネスコが推進する政策の方針や動きについても学び、議論する。
  2. 『人権』に関わるテーマ、例えばジェンダー、子供の権利、シティズンシップなどを取り上げて、随時「世界人権宣言」を参照しながら、条文の1つ1つの理解を深める。

2.教材

(以下はテキストとして使用。その他参考文献を多数紹介している)

  1. Education for International Understanding (by Lucie-Mami Noor Nkake, International Bureau of Education.)
  2. Osler, A., & Starkey, H. (2010). Teaching and Human Rights Education. Stoke on Trent, UK and Sterling, USA. Trentham Books

3.クラス運営に係る留意事項

留学生と日本人学生が対等な立場で興味と関心を持って積極的に参加できるような体制を作るため、教員はファシリテーターとして、学生に知識と課題を与え、学生が主体的に取り組むことを促す。

4.課題の内容・頻度

毎回、テーマと関連のあるトピックで授業を進めている。授業終了時に、次の授業までに準備すべき課題を与え、授業中は知識に関わる補足説明とディスカッション、関連するアクティビティを取り入れながら、参加型で行う。

5.評価方法

授業への参加度・出席(20%)、宿題・振り返り(30%) 、グループ・プレゼンテーション(30%)、試験(20%)

6.授業実践での留意点

15回の授業を前半と後半に分けて構成し、前半は知識習得、後半をプレゼンテーションの時間としている。前半は、グループでのディスカッション、後半はグループでのプレゼンテーションの準備と発表の時間にあて、授業時間外もグループのメンバーと共に、発表準備に励むことを促し、教員が一方的に学生を教える講義にならないよう、参加型で進める。

7.国際共修における教員の教育理念や目標

教員は単に知識を学ぶだけでなく、アィティブラーニングの手法を取り入れて、学生が積極的に参加し、発言できるような環境を築き、ファシリテーターを務めながら、学生をサポートする。最終的に、参加者が、「テーマに関する知識」を学び、人権に即した「価値/態度、技能、行動力」を身に付けることを目標とする。

8.授業で抱えている課題と課題改善への取り組み

課題1
日本人学生の英語力
初回の授業時にアンケートを用いて、学生に言語の相互支援について意識調査を行っている。2回目の授業では、その結果をフォードバックしながら、クラス内で互いに助け合うことを促している。授業中は教員も注意しながらクラス全体を観察し、必要に応じて言語支援や情報提供を行っている。また、日本語の資料や授業用のスライドのコピーを渡して、授業の内容を復習できるように配慮している。
課題2
出席率を保つこと
3回以上欠席すると単位を付与できないことを伝え、出席を促している。
課題3
留学生と日本人学生の混合について
留学生と日本人学生が多様なメンバーでディスカッションできるように、前半は毎回異なるグループで活動してもらう。その中で、教員とTAは参加者の様子を観察する。後半までに教員とTAは、個々の学生の特徴を把握し、学生の国籍や性別、英語力だけでなく、積極性も考慮しながら、プレゼンテーションで一緒に発表する固定グループを決める。このように、学生の積極性を考慮した固定グループを作ることで、消極的な学生も発言がしやすくなる様子が観察されている。